奮闘記 12 ☆ ハンドメイドセレクトショップmarshmallow(マシュマロ)
白紙の事業計画書をテーブルの上に置いたまま、1時間が経過した。
ネットショップ運営の再考もまだ手をつけていない。
考えること、やることが山積みで何から手をつけていいかわからなくなっていた。
2つ以上の案件を同時進行でこなしていくことが当時の私にとって乗り越えないといけない課題だった。
晩御飯の時間に、主人に相談してみた。
『2つ以上の仕事を同時にこなす時にどうすればいいか教えてあげるわ。
難しい案件から手をつけるといい。
今のさやちゃんのレベルだとネットショップの再考、事業計画書 どっちも難しいからネットショップの再考から考えてみ。』
なるほど、と思った。
言われてみれば、私は学生時代から得意教科ばかり勉強して苦手教科は一切勉強しなかった。
なので、成績表の評価が極端すぎると担任に指摘されていた。
仕事でも、電話応対が苦手なので極力電話を取らなくてもいいファイリングやデータ入力業務ばかり選んできた。
苦手なこと、難しいことから逃げてきたのだ。
しかし、起業を決めて、同じ目標を持った人たちと同じ空間で学んでいる自分と向き合った時、もう今までの意識ではいけないと思った。
これまでの自分とは立場が変わりつつある。
自覚
というものを持ち始めたのがこの頃だ。
私は、ネットショップの再考と事業計画書の作成に没頭し、1週間で完成させた。
新しいネットショップの運営方法は
"オーナー(私)が見つけたハンドメイド作家にmarshmallowオリジナル商品を製作してもらい買い取ってネットショップで販売する。
ただし、作家さんの世界観を壊すことがないように一緒に商品開発を行いmarshmallowでしか買えない商品にする。
marshmallowだけでなく、作家さんのファンも増やす。
ハンドメイド好きなお客さまだけでなく、marshmallowを通してハンドメイドを知らないお客様がドキドキワクワクして商品を選べる楽しみを提供したいので、色々な作家の商品を並べてセレクトショップ型式にする。"
というもの。
利用するネットショップサイトは、当時、注目され始めたBASE。
無料でネットショップが作れる独自型だ。
機能や利用規約、手数料等も隈なく把握して選んだ。
何より、ピアネックレスを購入したハンドメイドブランドがBASEを利用したネットショップだったので、購入する立場の使い勝手もわかっていたのが1番の理由だ。
屋号も
ハンドメイドセレクトショップmarshmallow(マシュマロ)
に正式決定。
私は今までの人生の中でこんなに集中したことがないくらいの勢いで事業計画書を書き上げた。
初めて自分で考えて生み出したmarshmallow。
愛着が湧くと同時に、オーナーという責任感が生まれた。
私次第でこのmarshmallowが進むか転ぶか決まる。
背筋がピンと伸びた。
ここから、私のマインドが急加速に変わっていくのである。
奮闘記 11 ☆ 事業計画書
屋号がmarshmallowに決まり、更に具体的にネットショップの内容を詰めていった。
創業セミナーの合間に、ありとあらゆるネットショップセミナーにも通った。
東京の渋谷にある大手ハンドメイドサイト運営会社で行われたセミナーにも行った。
ネットショップセミナーに参加する度に、担当スタッフに
『ハンドメイド作家が入力フォームに作品を出品して販売するネットショップを運営したい。』
と相談した。
しかし、全て返ってくる言葉は
『坪内さん。それは個人では管理が不可能です。サーバーも100万はかかります。企業では可能ですが、個人でましてや初心者でこの運営はお勧めできません。
他の方法を考えられたほうがいいですよ。』
だった。
専門家がこう言うなら不可能なんだろう。
どうにもならないことってあるのだ。
私は、ネットショップの運営方法を再考することになった。
そして、創業セミナー第2回目は主催銀行の名古屋営業所の所長さんの講話だった。
内容は、
愛知県の創業率について
女性の創業について
(当時、国が女性起業を推進していました)
事業の開業資金について
銀行融資について
などだった。
銀行から事業資金を融資してもらうために、事業計画書という書類を書く必要があるということをこの時に知った。
事業計画書とは、事業内容や企業の戦略・収益の見込みなどを説明するための文書。
見るとわかっていただけると思うが、なんじゃこりゃ?なのである。
事細かく必要資金などを記入する項目があり、内容がしっかり書けていないと融資審査が通らないこともある。
セミナーでは、融資受ける受けない関係なく、自分の事業について事業計画書を記入するという課題が出された。
1週間で完成させなければならない。
ネットショップの運営方法も考え直さないといけない私はまたまた大パニックに陥った。
奮闘記 10 ☆ marshmallow誕生
創業セミナー第1回目の講義を終えた私は翌日からネットショップの屋号とコンセプトなど具体的に練り始めた。
まず、
誰に
何を
どのように提供するのか
を考えた。
(これは今、私がメイン事業としているハンドメイドクリエイターさん専門のコンサルティングサポート marshmallowサポートゆめレクチャーの中で1番最初にクライアントにレクチャーするビジネスプランです。)
初めてハンドメイドアクセサリーを身につけた時ドキドキワクワクした。
このドキドキワクワクをハンドメイドを知らない人にも届けたい。
ハンドメイドイベントに行くとお母さんやおばあちゃんが自分の子供や孫のために雑貨などを選んでいる。
彼氏が彼女のためにアクセサリーを購入したいがお店に行くのが恥ずかしくてネットで購入している。
実際に目で見て感じたことをまとめていった。
そこで思い浮かんだのが、
子供からおじいちゃんおばあちゃんが家族揃って見て楽しめるネットショップにしたい。
私のネットショップでしか買えない個性的なオリジナルのハンドメイド商品を販売。
SNSやブログで宣伝する。
であった。
ネットショップの屋号はどうしようか。
勉強していく中で、屋号は誰もが読みやすくわかりやすいものがいいというのを見た。
頭フル回転で連想することを書き出す。
家族揃ってネットショップを見る
↓
家族揃うって家族団欒の時間
↓
家族団欒の時間にお菓子を食べる
↓
お菓子はふわふわした甘いお菓子
.....ふわふわした甘いお菓子?
マシュマロ。
マシュマロか。
響きもかわいいな。
カタカナ表記しっくりこない。
marshmallow
このままだと読みづらいな。
marshmallow(マシュマロ)
これならカタカナが読めるようになった小学生でも読める。
よし!
屋号は
marshmallow(マシュマロ)
にしよう!
でも、これだけだと何を売ってる店かわからない。
そこで、marshmallowの前にハンドメイドマーケット をつけた。
ハンドメイドマーケット
marshmallow(マシュマロ)
いいやん!
屋号としてしっくりくる!
自画自賛状態である。
(この後、様々な理由でこの屋号は変わるのだがそれはまた追い追い。)
こうして、marshmallow(マシュマロ)が誕生した。
奮闘記 9 ☆ 泣きながら行った創業セミナー
初めて通った創業セミナーは全3回。
週1回 毎週水曜日の夜に名古屋市内の銀行の会議室で行われた。
私は、創業セミナーが何をする所で、どんな人が来て、誰が教えてくれるのかをセミナーの説明概要を読んで理解はしたのだが、第1回目のセミナーの前夜、とてつもない不安感と恐怖感に襲われた。
“参加する人、みんなきっと大学出て頭が良くて社長さんとかばっかりの中に私がいたら絶対浮く。何も知らないから馬鹿にされる”
“行きたくない”
完全な1人よがりの思い込みである。
『行きたくない、怖い。銀行の中に入るのも怖い』
と意味不明な理由をつけて主人に泣いて訴えた。
『はぁ?!』
当然の反応である。
今、目の前に当時の私と同じ事を言う人がいたら、何言ってんの?と思うだろう。
しかし、私は本当に銀行の中に入るのが怖かったのである。
銀行なんて、日中、窓口やATMを利用するだけだ。
窓口の営業時間が終わった銀行なんて行ったことがない。
ましてや、裏口から入る。
警備員がいる。
これまで足を踏み入れた事がない環境だと思うと怖かった。
今、思えば自分に自信がなかったのだと思う。
私は泣きながら名古屋へ向かい、歩きながら会場の銀行を目指した。
第1の難関。
警備員に声をかけて中に入れてもらう。
挙動不審な言い方で
『あ、あの...18時からのセミナーに来たんですけど、は、入れますか?』
『あーはいはい、どうぞ。3階ね。』
警備員はそう言うとエレベーターを押した。
そして私は3階に降りた。
少し歩くとフロアの廊下にスーツ姿の男性が立っていた。
『創業セミナーに参加の方ですか?どうぞ中にお入りください!』
満面の笑みで案内され、会議室の中に入った。
第2の難関。
どこに座ればいいのか。
『あの、どこに座れば』
『前の方にどうぞ』
と誘導されるまま、2番目の席に着いた。
すると、また別のスーツ姿の男性とさっきの男性たちが名刺を持って現れた。
行員と講師の行政書士だった。
私は相変わらず名刺がなく、彼らの名刺を受け取ると、苗字だけ言って挨拶をした。
そして、続々と参加者が入ってきた。
若手社長らしき男性。
キャリアウーマンのような女性。
会社帰りのサラリーマン
など10名ほどいたと思う。
第3の難関。
私は浮いていないだろうか。
ドキドキしていると開始時間になった。
自己紹介とかはなく、主催銀行の担当者から挨拶と創業セミナーの説明から始まった。
そのまま、第1回目の講師 行政書士の先生による講義が始まった。
難しいのかと思っていたが、わかりやすい説明で普段ニュースや白書などで読んで勉強した用語が出てきて板書もスラスラ書けた。
休憩時間、ふと周りを見るとパソコンでメールのやり取りをしている人や事業の話をしている人を見て
”あ、私は今こんなに真剣で本気の人たちと同じ場所にいて学んでいるんだ。
私、泣いている場合じゃない。
この人たちに少しでも近づけるようにならなくちゃ。"
この瞬間である。
私の中で変化が起こったのは。
マインドが変わった第一歩だった。
残りの講義が終わり、第1回目終了。
あれほど不安で怖かったのに、泣いていたのに、全然大丈夫だった。
むしろ、もっともっとビジネスや起業について学びたいとメラメラ燃えていた。
会議室を出て、外に出たらまさかの主人が立っていた。
心配になって迎えに来たという。
『楽しかった。来週も頑張る。』
私は、この日を境に自分で決断して行動するようになった。
奮闘記 8 ☆ 模索する日々
苦い思い出となった初めてのセミナー参加を終えた私は、これではいけない!とネットショップ運営の本を買い、セミナーで貰った資料を見ながら自分なりに復習した。
そして、この頃から名古屋市内で開催されているハンドメイドマーケットやイベントに足を運ぶようになった。
この当時、よく見かけたのが、ママさん作家さんが作るキルティング生地のリコーダー袋や移動ポケット、お稽古バッグなどだった。
『お母さんが作るような手芸品ばかりだなぁ。作家さんも座ってうつむいたままだし。なんか暗いなぁ。』
これが私が抱いたハンドメイドとハンドメイドイベントの第1印象だった。
単価も安いし、これで儲かるの?
と正直疑問でもあった。
本当に大丈夫なの?と。
独学の勉強やハンドメイドイベントの視察を重ねながら、どんなネットショップを作ろうと模索していた。
私がピアネックレスを買った時のようにお客さんがドキドキワクワクするようなハンドメイド商材はどうしよう、、、。
私はとっても不器用である。
図工や美術、技術は大の苦手だった。
ハンドメイド商品を自分で作って売る、とは最初から考えていなかったので、考えに考えた結果が
入力フォームがあるネットショップを作ってハンドメイド作家さんに自由に好きな時に商品を登録してもらって販売しよう!毎日いろんな作家さんが商品を登録すればお客さんもきっと楽しい!
というものだった。
これならできる!とどこから湧いてくるのか変な自信があった。
思いつくまま、ノートに書き起こして主人に見せた。
今読み返すと本当に恥ずかしいの極みである
絶対OK貰える!と自信満々だったが、ノートを読んだ主人が放った一言が
『薄っぺらいな』
だった。
『客層も見えてこないし、そもそも、これ、管理できるわけ?登録作家はどうやって見つけてくるの?』
...客層?!管理?!
そんなもの、考えていなかった。
『だめだ、基本が分かってない。独学じゃだめだ。創業セミナー行ってこい。それで自分のレベルを知ってこい。』
こうして私は、春を迎える頃、転機となった伝説の創業セミナーに通うことになったのである。
奮闘記 7 ☆ 初めてのセミナー参加
ネットショップについて学ぶため、私は初めてセミナーというものに参加した。
平日の午後であったが、貸会議室が満席だった。
ちなみに、このセミナーは主人がネットで探してきて申し込んだものだ。
ここまでこの奮闘記を読んでくださっている方はお気づきだろうが、私はこの時点で1人で判断し、行動するということができていない。
当事者意識がほとんどないというとんでもなく情けない人間だった。
初めてのセミナーに緊張しながら会場に入ったが、担当者が同い年くらいの優しい雰囲気の女性だったので緊張が和らぎ、席に着いた。
この時、名刺を渡されたが、私は名刺も何もない状態だったので
『すみません、私まだ名刺がなくて...』
と謝ったことを覚えている。
セミナーは、ネットショップとはどういう仕組みで、どのように運営していくかをモニターを見ながら担当者が説明していく。
配られた資料もたくさんあった。
ネットショップにも種類があって、モール型と独自のネットショップがあるということもこの時、初めて知った。
テンポよく話が進んでいくが、私は途中からついていくことができず、メモをとるペンも止まっていた。
セミナーは2時間だったが、ついていくのに必死という感じで終わった。
結局、よく理解しないまま、会場を出た。
わざわざ交通費をかけて名古屋に来たのに質問もせずに帰ったのである。
帰りの電車の中で、資料を読み返した。
どうしよう、何もわからなかった...
わからない事がわからない....
初めてのセミナーは苦い思い出が残った。
奮闘記 6 ☆ 0円起業
それから、私は
午前から正午まで家事や食材買い物
午後から夕方まで ビジネスの勉強
晩御飯の準備と食事が終わったら、ハンドメイドでどう起業するかを考える
土日は主人が先生になって経理帳簿や書類の見方の指導や起業に向けての会議
このスケジュールがルーティーンとなった。
経済白書や新聞、商工冊子、ビジネス本などありとあらゆる書物を読み、用語を学び、わからない用語はインターネットで意味を調べた。
初めて知る事ばかりで頭が大パニックだったが、1つ1つ知っていくことが楽しくて仕方なかった。
夜は経済番組やニュース、主人が録画している情報番組を観ながらコメンテーターの意見を書き留めたりもした。
勉強したビジネス用語などが出てくるとニュースの内容も深く入ってくるものだ。
『これはこうだからこの人はこんな意見を言うのかな?私はこう思うなぁ』
とテレビを観ながら発言することも増えた。
考える事や疑問を持つ事をしてこなかったので、今もたまに主人に言われるが当時の私はまるで赤ちゃんが成長する姿のようだったそうだ。
そうしながら、1月も終わる頃。
ハンドメイドでどう起業するのかが決まった。
『会社を作らなくても起業することができる0円起業を目指す』
当時、0円起業というワードが聞かれるようになった時だったと思う。
初期費用0円で起業である。
具体的にどう起業するのか。
考えに考えて出した結論が、
普段自分も利用しているネットショップを自分で運営してハンドメイド品を販売する小売業で起業する。
しかし、まだどんなハンドメイド品をどのように販売するのかまでは考えていなかった。
もちろん商材もない。
ネットショップ、作ったこともない。
どうしたらいいのか。
1つ決まったら1つ悩む。
当時はこの繰り返し。
そして、どうしようもなくなった私は初めてセミナーというものに参加することになるのである。