奮闘記 9 ☆ 泣きながら行った創業セミナー

初めて通った創業セミナーは全3回。

週1回 毎週水曜日の夜に名古屋市内の銀行の会議室で行われた。

私は、創業セミナーが何をする所で、どんな人が来て、誰が教えてくれるのかをセミナーの説明概要を読んで理解はしたのだが、第1回目のセミナーの前夜、とてつもない不安感と恐怖感に襲われた。

“参加する人、みんなきっと大学出て頭が良くて社長さんとかばっかりの中に私がいたら絶対浮く。何も知らないから馬鹿にされる”

“行きたくない”

完全な1人よがりの思い込みである。

『行きたくない、怖い。銀行の中に入るのも怖い』

と意味不明な理由をつけて主人に泣いて訴えた。

『はぁ?!』

当然の反応である。

今、目の前に当時の私と同じ事を言う人がいたら、何言ってんの?と思うだろう。

しかし、私は本当に銀行の中に入るのが怖かったのである。

銀行なんて、日中、窓口やATMを利用するだけだ。

窓口の営業時間が終わった銀行なんて行ったことがない。
ましてや、裏口から入る。
警備員がいる。
これまで足を踏み入れた事がない環境だと思うと怖かった。

今、思えば自分に自信がなかったのだと思う。

私は泣きながら名古屋へ向かい、歩きながら会場の銀行を目指した。

第1の難関。

警備員に声をかけて中に入れてもらう。

挙動不審な言い方で

『あ、あの...18時からのセミナーに来たんですけど、は、入れますか?』

『あーはいはい、どうぞ。3階ね。』

警備員はそう言うとエレベーターを押した。

そして私は3階に降りた。

少し歩くとフロアの廊下にスーツ姿の男性が立っていた。

『創業セミナーに参加の方ですか?どうぞ中にお入りください!』

満面の笑みで案内され、会議室の中に入った。

第2の難関。

どこに座ればいいのか。

『あの、どこに座れば』

『前の方にどうぞ』

と誘導されるまま、2番目の席に着いた。

すると、また別のスーツ姿の男性とさっきの男性たちが名刺を持って現れた。

行員と講師の行政書士だった。

私は相変わらず名刺がなく、彼らの名刺を受け取ると、苗字だけ言って挨拶をした。

そして、続々と参加者が入ってきた。

若手社長らしき男性。

キャリアウーマンのような女性。

会社帰りのサラリーマン

など10名ほどいたと思う。

第3の難関。

私は浮いていないだろうか。

ドキドキしていると開始時間になった。

自己紹介とかはなく、主催銀行の担当者から挨拶と創業セミナーの説明から始まった。

そのまま、第1回目の講師 行政書士の先生による講義が始まった。

難しいのかと思っていたが、わかりやすい説明で普段ニュースや白書などで読んで勉強した用語が出てきて板書もスラスラ書けた。

休憩時間、ふと周りを見るとパソコンでメールのやり取りをしている人や事業の話をしている人を見て

”あ、私は今こんなに真剣で本気の人たちと同じ場所にいて学んでいるんだ。
私、泣いている場合じゃない。
この人たちに少しでも近づけるようにならなくちゃ。"

この瞬間である。

私の中で変化が起こったのは。

マインドが変わった第一歩だった。

残りの講義が終わり、第1回目終了。

あれほど不安で怖かったのに、泣いていたのに、全然大丈夫だった。

むしろ、もっともっとビジネスや起業について学びたいとメラメラ燃えていた。

会議室を出て、外に出たらまさかの主人が立っていた。

心配になって迎えに来たという。

『楽しかった。来週も頑張る。』

私は、この日を境に自分で決断して行動するようになった。