奮闘記 5 ☆ 芽生え

私は何の知識もないままゼロから起業準備をスタートさせた。

まず、最初に行動したこと。

それは、実印を作ることだった。

自分で事業を始めるという責任感と自覚を持つ為に坪内佐耶佳としての実印を作ったらどうか。事業の為の銀行口座も開設しよう。

主人からの提案だった。

この時点でまだ自分が事業主になるという実感がないので、

あ、そうなんだ。そういうの必要なんだ。

としか思えなかった。

言われるまま、近所の印鑑屋へ実印を作りに行った。

実は、実印という物を作ったことがなかったので店員さんにあれこれ聞かれても何も答えれず、結局、会社で総務経理をしている主人に任せっぱなしになってしまった。

その時、初めて、

知らないって恥ずかしくて怖い。

と今まで感じたことのない恐怖心にかられた。

帰り道、主人に

『起業する気持ちは固まったけど何もわからなくて怖い。知らないこと勉強したい。』

と話した。

主人は、初めからこうなる事を想定していたのだろうか。

帰宅して、私に何冊もの経済白書を渡した。
(なぜ白書を持っていたのかは謎)

『まず、これをひたすら読め。読んでわからない単語があったらそのページに付箋貼ること。今週の宿題な。』

こうして、私の人生の中で初めての猛勉強が始まるのである。